薬は、ずっと飲まないといけないのでしょうか?

ここのところ、クリニックでよく聞かれる言葉です。

高血圧や高コレステロール血症、あるいは尿酸や血糖値が高い方から、尋ねられるご質問です。

答えは、「いいえ」です。

今朝は、積もった雪の中を滑らないように歩いてクリニックに来ました。足元をずっと見ていて、ふと見上げると陽射しがまぶしくて、時折顔を上げて景色を楽しんでいました。

 

さて、生活習慣病で薬を飲み始めた方や、たとえば糖尿病でインスリン注射を始めた方、... 「これは、ずっと(一生涯)続けるのですか?」と聞かれます。

答えは、ノーです。

一つの理由は、「生活習慣病は、生活習慣の改善によって治すものだから」というのがあります。これは、正論です。でも、それが難しいことは、ましてや自分の病気のことを知っている人にとって「当たり前」のことです。

 

「ずっと飲み続けないといけない訳ではない」のは、簡単な理由です。

多くの場合は、そのお薬をやめたら、「そのお薬を飲み始める前に戻るだけ」だからです。

中には、「中止の際には、ゆっくりと減らしていってから、中止する」必要がある薬もありますから、それには注意が必要です。

でも、たとえば高血圧の薬(降圧剤)を飲んでいる患者さんが、ある日突然「薬を飲むのをやめた!」と中断したら、それは、治療を受ける前に戻るだけのことです。

加齢による変化を除けば、「一定期間、身体にとって有効な薬を飲んでいただいた」分だけの光明はあるはずで、「治療を受ける前に戻る」よりも、よっぽど良くなっていると想像できます。

 

で、原点に戻ってお話しします。

クリニックで処方するお薬には、その方にとって必要と判断されるだけの医学的な理由があります。

でも、その方が嫌なことを「絶対的に強制する」ことは、私もまた嫌です。

医学的な情報は一所懸命提供します。その上で、内服薬一つでも、お互いが納得して続けていきたいと考えています。

それが結果として長期にわたる場合もあります。

ただ、飲み始めの頃から、「ずっと飲み続けないといけない薬」と否定的に考えてしまうのは、ちょっと違うかなぁと思ってしまいます。