その方との出会いは、1ヶ月ほど前の土曜日の昼下がりでした。
土曜日も通常診療のエミング千駄木クリニックですが、午後1時からは昼休みです。そんな1時過ぎに、保険診療上は後期高齢者と呼ばれる女性が来院されました。
足をぶつけて出血したとのことで、ご近所の当院に来ていただきました。
「しばらく押さえていても、血が止まらない」というお言葉の通りで、浅いところですが静脈性の出血がだらだらと続いていました。最近は、切り傷でも石鹸で洗って止血したら保護材をかぶせて終わりという治療が主流ですが、その時は「縫って止血する必要がある」と判断して、3針縫合しました。「内科」を標榜するエミング千駄木クリニックでの手術です。
それは、さておき...
創部は順調に回復して、抜糸しようかという頃、当院の看護師が「一度、血圧はかってみませんか?」と、その方に声をかけました。測定してみると、いわゆる「200/100レベル」の高血圧でした。
予後を考えると放置できる高血圧ではなく、早速に内服治療を開始し、経過を見ながら薬の種類を変えたりしています。
ちょっと専門的になりますが、最近は第1選択として使用されることが多いARBという系統の降圧剤を最初は使用し、ゆっくりとした降圧を確認しながらも不十分であったので、利尿剤を重ねました。夏場に利尿剤を重ねることには慎重であるべきです。しかし、いわゆる中年の方には多く用いる「ARB+Ca拮抗剤」という組み合わせは高齢の方には無効であることが多く、「ARB+利尿剤」というステップに進みました。今は配合剤が製造されているので、2種類を内服する必要もなく、またお薬代も1種類の時とそんなに変わらずに済みます。
それも、さておき...
その方は、「医者に行ったことがない」と言われていました。それで、高血圧の家系であることは意識しておられながらも、ご自身の血圧には興味がなかったご様子でした。それが、たまたま怪我をしたことでかかりつけ医ができて、... ご幸運だったと思います。
極度の高血圧でしたので、突然に脳出血を起こして、言葉や身体の麻痺が起こることは予想できました。そうでなくても、全身の血管に過度の負担をかけ続けていたわけです。
その方は、先月、当院の待合室で実施した第1回公開医療講座「血管」にも参加してくださいました。内科系の疾患は、ご本人が正しい知識を持つことが「効果的な治療の第1歩」となることがほとんどです。
まだ、しっかりと血圧を管理していく途上ですけれど、高血圧の治療をしながら全身のことも診させていただいて、そして生活習慣も一緒に考えています。必要に応じてゆっくりとお話しできることも、特に内科にとっては重要です。
国語の試験では「無病息災」と書かなきゃいけません。でも実際には、なにか一つの病気をお持ちで、そのためにかかりつけ医がいて、そして「お元気で、長生きされる」ことの方が多いのではないでしょうか? これをして、「一病息災」と考えます。
今回のブログを書くに際して、もちろん、その方のご同意を事前に頂いております。
エミング千駄木クリニックでは、個人情報管理もしっかりとやっておりますので、最後に書き加えておきます。