保険診療とは?

日本は国民皆保険が機能しており、誰もが高水準の医療を享受することができます。

ただし、そこにはルールがあります。それぞれの疾患に対して「最も妥当と思われる医学的手段で治療する」ことです。当たり前のようで、これが難しかったりします。

たとえば、「ビオフェルミンR」という薬があります。「腸内細菌叢を整える」って、つまり「おなかの中の善玉菌を元気にする」薬ですが、もっと端的に言えば「下痢に効く」薬で、自衛隊駐屯地の医務室では「その人の症状が良くなるのであれば」簡単に処方していました。でも、保険医療では認められません。「抗生物質等を投与する際の、腸内細菌叢異常による症状」が認められなければ、健康保険では使えない薬になってしまいます。

それを、もしクリニックで処方するとどうなるのか...

患者さんから頂戴した負担金はさておき、健康保険から翌々月にいただけるはずの診療報酬の一部に穴が開きます。また、調剤薬局さんが健康保険からもらえるはずだった金額もクリニックが負担することになるそうです。

「その人の、今の症状には、この薬が効く」と考えても、それは最も妥当な医療の一つではないということです。

それでも、その医療を提供したい、あるいは享受したいということであれば、それは健康保険ではなくて、(医療を受ける人が全額を負担する)自由診療で行われることになります。(混合診療が認められない話は、ややこしくなるので省きます。)

 

私は、3月まで自衛隊で医官をやっていました。正直、保険診療とほとんど縁がなく、また受診者のほとんどが「医療費無料」というのは以前に書いた通りです。

自分が受ける医療も無料で、誰に迷惑をかけるものでもないと思っていたので、肩こりや腰痛に困っているときには、それこそ「山のように」湿布をもらって帰りました。今思うと、夢のようです。

でも、クリニックで診療を始めてから強く実感することがあります。それは、「薬は効く」ということです。

処方薬の用量は本来は「体の表面積」で増減させますが、そもそもが屈強で体のデカい自衛官って、薬が効きにくかったのかもしれません。ストレスと宴会の多い職場であることも理由だったのかもしれません。それはさておき、... やっぱり、処方薬は、よく効きます。

 

さて、エミング千駄木クリニックでの、保険診療の枠組みのお話をいくつか...

①禁煙外来は、基本的に保険診療の枠組みの中でやっております。

 ニコチン依存症について診断の上、その診断がついた患者さんには、保険の枠組みで「禁煙補助薬」を処方したりしながら、一緒に禁煙を達成していきます。

②男性型脱毛症(AGA)の患者さんの場合、お笑いコンビの「爆笑問題」さんがCMをやっていてご存知の方もおられるかと思いますが、これは自由診療で発毛を助ける薬を処方します。

 日本皮膚科学会の公式見解として、男性型脱毛症にはっきりと効果のある治療は二つしかありません。残念ながら、それらによらない植毛・育毛の効果は科学的には認められていません。

③男性の勃起不全(ED)については、基本的に自由診療です。ただし、背景に内科的疾患がないかどうかを確認して、もしそれらに対する治療が必要であれば、たとえばそれが糖尿病であれば、糖尿病については保険診療として治療を実施します。

 有名なバイアグラは海外からの偽物も流通していて個人購入は危険ですし、そもそも「本当に効く薬」はしっかりと処方を受けないと危険です。

④女性の更年期症候群については、基本的に保険診療を実施しています。いくつかの質問にお答えいただいたりして、本当に更年期の症状かどうかを判断し、その上で、いくつかの選択肢を一緒に考えたりします。

 保険診療として妥当である場合には、漢方製剤を投与したり、プラセンタ注射を選択したりもします。

 

いくつかのお話も書いてみましたが、なにごとによらず、よろずご相談いただければ幸いです。